おやすみ日常

眠るように暮らしたい

先生

 

 

23歳になっても、まだまだ、「人生初めての○○」がたくさんある。

昨日は地元の友だちと四人で「人生初めてのスノボ」に行ってきた。

 

とはいえ、わたし以外の三人は経験者である。大丈夫かな‥‥とビクつきつつも、楽しくスキー場へと向かう。この時は大分余裕があった。わたしはスキーならブイブイいわせられるほど滑れるし、頭の中ではスノボを乗りこなすイメージができていたからだ。

 

スキー場に到着し、板をレンタルし、やったるでと意気込みながらゲレンデに降りる。小雪かもしれないという心配は当たり、滑走可能なコースは少なくなっていたが、雪質は良かった。初心者には全く問題のない環境だった。

 

 

初めて、板をつける。ガシャンとはめるだけのスキーとは違って、なかなかつけるのに時間がかかるスノボ。手間取る。

さてようやく履けたとなると、次に襲いかかってくる難題がリフトである。乗り場まで乗って行くのも至難の技だし(どうしたって左へ左へと進んでしまう!)、リフトから降りてススーッと滑るのも初心者にとっては困難を極める。何度も何度も無様な姿を世間に晒した。

 

 

今回のメンバー、全員経験者といったが、その中でもスノボに通い詰めている一人の男の子の技術は目を見張るものがあった。あまりにもわたしができないので、彼が先生になって教えてくれた。

左足を下にして板をまっすぐにし、スピードがついて怖くなったら右足で踏ん張り斜面に平行になり止まる。これをまず繰り返した。怖がりながらも、これはできるようになった。でも、これだけではスノボができたことにはならない。こちらの動作が表だとしたら、裏の動作(斜面を背にして右足で踏ん張ること) もできなければいけない。伝わるだろうか、この表現。自信がないので読者の想像力に委ねたい。

 

それを聞いて、少し先生の目から離れたところで練習し始めた。斜面を背にして踏ん張るのは本当に怖い。というかまず斜面を背にすることができない。少し間違えれば頭からひっくり返るだろうなという恐怖が、わたしをチキン野郎にさせた。

 

 

案の定その予感は当たり、一人で練習していたわたしは気が付いたら頭をごちーんと打っていた。(ああ‥‥お父さんがヘルメット付けなさいと言ったのに約束破ってごめんなさい)(やばい、ここで脳しんとう起こしたらマジで笑えねえ)(いたい)(いたい)(こわい)(死んだ)

 

 

結果からいうと死にはしなかった。しかし、すぐには立ち上がれないほどの心の痛みを折った。(こわい‥‥やめたい‥‥今すぐにでもスキーに履き替えたい‥‥スキーならばこんな坂すぐに‥‥でもわたしの足についてるのはスノボ‥‥そもそも両足が一つの板に固定されるってなんだよ‥‥危なすぎだろ‥‥あんなにやりたがっていたのに今はこんなに憎い存在になるなんて情けねえ‥‥)と様々な感情が押し寄せたが、下で三人が待っていると思うとそうゆっくりもしていられなかった。半泣きで坂をくだる。ほとんどお尻で滑ってきたかもしれない。それくらい怖かった。

 

心がぽっきり折れたわたしはリフトで話す元気さえなくなってぼーっとしていた。「恐怖心が勝ってる!!!」とゲラゲラ笑われても、ふっと笑い返すことしかできなくなったわたしを見かねてか、先生が付きっきりで教えてくれた。わたしの課題である、裏スタートで足を踏ん張らせる練習が始まった。正直、もうできなくてもいいよ!!怖いから帰りたい!!という気持ちだったが、先生の真剣さと「練習するぞ!がんばれ!」という前向きな言葉によって、強引ではあるが気持ちが奮い立たせられた(いやお前のための先生なのに何言ってんだ)。

 

さて後ろ向きで踏ん張ってみたものの、踏ん張りが聞かず小鹿のようになってしまう。いくらただの友だちとはいえ、男の子に小鹿姿を見せるのは恥ずかしい。羞恥心と寒さと恐怖心が一気に襲いかかる。何回か繰り返すと、この感覚か、と掴みつつある自分に気が付いた。たしかその次の次のリフト後に、ようやく裏でも踏ん張れるようになった。やっと楽しさがでてきた。できるようになって、二回滑ったところで時間がきてしまった。

 

 

今思えば、経験者が下で待っているというほどよいプレッシャーがスパルタ教育的に、滑り続けられる理由になった。初心者×初心者 で練習していたとしたら、心が折れた者同士で「ちょっとコーヒー飲んで休憩しよっか~」となっていたに違いない。実際、一人で休憩しようか悩んだほどである。

 

そして、滑れるようになった理由のもうひとつに先生の素晴らしさがある。自分はガンガンに滑れるのに、拙い練習に付き合ってくれて本当に優しいなと思った。先生はわたしがどんなに下手くそでも笑わずに、「バランス感覚あるね!」「大丈夫!」と励まし続けてくれた。先生の言葉の力と前向きな姿勢は本当に有り難く、できない者にとって大きな推進力になるのだと判った。滑る意欲を保たせてくれた先生に大感謝である。見習いたいものだなぁと思った。

 

 余談だが、遠い昔、彼はわたしにとって初恋の人だった。幼稚園生だったわたしの目に狂いはなかったのだなと、誇らしい気持ちになった。頼りがいのある男性に育っていて、嬉しい限りである。

 

 

できないままであったら、スノボに嫌なイメージを抱いたままスキー場を後にしていたと思う。

だが、滑れるようになった最後には、さながら、ハンター試験時のキルアになった気分だった。(HUNTER×HUNTERという少年漫画に出てくる、スケボーを乗りこなすかっこいい男の子)

あとで友だちが撮ってくれた動画を観た時、そのイメージとは程遠い自分の姿に愕然としたが、それでもいい。またスノボをしたい、もっと上手になりたい、と思いながらにこにこで帰路についた、充実した初スノボ体験であった。